ほかではあまり書かれていないことなので、ここに書き留めておきます。
雑誌『音楽教育』の5巻4号(1943年4月号)に、白井保男著「我国楽譜印刷の過程」という記事(p.48~52)があります。著者は共益商社書店社長。明治14年の『小学唱歌集』初編に始まる木版印刷時代から、楽譜版下の誕生、セラチン凸版時代、石版時代及び亜鉛凸版時代、オフセット時代と現在(=昭和18年)までの概要が書かれています。
その最後に、ドイツ(リヒャルト・シュトラウス)、イタリア(ピッツェッティ)、フランス(イベール)、ハンガリー(ヴェレッシュ)各国から寄せられた紀元二千六百年奉祝楽曲のオーケストラスコア「全4冊 総頁550ページといふ膨大なもの」と共に、「近く刊行されます信時潔氏の「海道東征」スコア150頁」は、「近代の我国楽譜印刷の精華を証左するものでありましょう。」とあります。
確かに、日本人の作曲家の、演奏時間一時間にも及ぶオーケストラ・スコアは、ほかにあまり例が無く、7枚組みSPレコードと同様、印刷楽譜としても、画期的なものであったのかもしれません。
「海道東征」の、ピアノ・ヴォーカルスコアは、昭和15年11月の初演以前の8月(おそらく合唱団の練習開始の頃)に発行され、翌年6月再版。管絃楽総譜(フルスコア)は昭和18年10月に発行されています。
http://noblogblog.blog.shinobi.jp/Entry/17/楽譜印刷と「海道東征」
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