「海道東征」パート譜の謎1 から読む
藤田由之先生からのお電話の主旨は次のようなものでした。
1961年12月というのは、ちょうど読響のメンバーを集めていた頃。再演放送のオーケストラ「インペリアル・フィルハーモニー」というのはABC交響楽団から抜けたメンバーで、そのための編曲だということは、自分だったかもしれない。来てもらっても、どこかに出かけても良いので、その楽譜と、更に原曲のスコアを見れば、何のために編曲したのか、思い出せると思う。
ここまで仰っていただいたなら、楽譜を一緒に見ていただくしかありません。あれこれ算段をつけて、パート譜実物を所蔵している東京芸術大学附属図書館までご一緒いただき、閲覧することになりました。
さて、ここで1962年再演放送のことを記録しておきます。
再演までの経緯は、当時のプロデューサーだった阪田寛夫先生の
小説「海道東征」(『うるわしきあさも』(講談社文芸文庫)に再録)に、詳しく書かれています。
録音は1961年12月28日に行われ、1962年1月3日、キューピーマヨネーズの提供で放送されました。
私の手元にある当時の録音テープでは、最後にアナウンサーが演奏者を読み上げていました。(阪田先生の小説「海道東征」の中で、信時潔が1962年の1月3日に「妙蓮寺」・・・というのは当時三男・三郎が住んでいた場所・・・で、テープで録音しながらラジオ放送を聴いたという、そのテープです。)
独唱 伊藤京子 蒲生能扶子 戸田敏子 中村健 中山悌一
管弦楽 インペリアル・フィルハーモニー
合唱 コールメグ ABC女声合唱団 東京コラリアーズ
西六郷少年合唱団
指揮 前田幸市郎
合唱指揮 大中恩
解説 村田武雄
放送では、編曲については、とくに言われていませんでした。
なお、村田武雄氏の解説は、非常に的確に、わかりやすい言葉で、各章の内容を紹介しているので、テープから聞き取ったものを次に書き留めておきます。
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第一章 高千穂
これは輝かしい国の賛辞を述べる全曲の荘厳な序章です。バリトンとテノールの独唱、ならびに合唱で歌います。
第二章 大和思慕
はるかに大和を想う優雅な抒情歌です。蒲生能扶子さん、伊藤京子さん、戸田敏子さんのメゾ・ソプラノ、ソプラノ、アルトの女声独唱と重唱です。
第三章 御船出
朝日が出で、輝かしい船出の様をアルト独唱と合唱とで歌う「御船出」。
第四章 御船謡
バリトンの中山悌一さんが、ピアノの伴奏で語るように船出を告げる、おおらかな中に素朴な楽しさのあふれる楽章です。
第五章 速吸と菟狭
(解説部分のテープ録音が途切れているため聞き取り不能)
第六章 海道回顧
長い年月重ねた船旅の数々を想い起こして、独唱ならびに合唱で歌います。
第七章 白肩の津上陸
海辺の激しい戦いの嵐と、進軍の様とを描いていきます。
第八章 天業恢弘
建国の大業の成った歓喜と祝典とを、独唱と合唱とで歌い寿ぐ終曲です。
以上のように、録音当時の状況を復習してから、芸大図書館へパート譜の閲覧に伺ったのは、7月も半ば過ぎの暑い日の午後でした。 (つづく)
http://noblogblog.blog.shinobi.jp/Entry/50/「海道東征」パート譜の謎 3. 1962年再演放送の記録
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