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昨日、このたびリニューアルされた木下記念スタジオ(@代々木上原)にお邪魔して、
同スタジオ所蔵の信時潔関係資料を拝見させていただきました。
そのなかに、今回収録したレコードで歌われているのに、歌詞カードが見つからず、
自筆譜はもちろん、今まで確認された出版譜、印刷譜に載っていないため
聴き取りだけでは掲載できなかった「大島節」の3番の歌詞が見つかりました。
DISC1-04 解説書のp.19の歌詞は、一番から次の通りとなります。
ただし、見つかった楽譜中にはひらがなで書き込まれていましたので
漢字表記は私の判断によるものです。
あー
私しや大島
御神火(ごじんか)育ちよ
胸に煙りがよ
絶えやせぬ
あー
躑躅(つつじ)椿は
お山を照らすよ
殿のお船はよ
灘(なだ)照らす
あー
別れつらくも
帆を巻く朝はよ
涙ながすなよ
波が立つ
なお、見つかった印刷譜は「日本放送協会」の名が入ったもので、印刷年の表示は無し。
2種みつかったもの両方に、3番の歌詞がペン、鉛筆で書き込まれています。
今回のCDに収録されている木下保指揮「大島節」のレコードは昭和11年7月17日録音。
ほかに、 昭和16年7月10日に、木下保指揮・東京交声楽団の演奏が放送された記録が
あります。
團伊玖磨さんと信時潔は、直接師弟関係はありませんでしたが、團さんの書かれたものにいくつか信時潔が登場していて、その文章からは、團さんの思いが伝わってきます。
DISC-1 の「紀の国の歌」の解説では、パイプのけむりシリーズの中の、この曲に関する部分を紹介しています。 この記事を見つけることができたのは、早崎日出太さんによる 團伊玖磨全仕事 というサイトのおかげです。 なかでも パイプのけむり のページの右下に、「パイプのけむり辞書」の入り口があって、なんとすばらしいことに、人名などで検索ができるのです。團さんが、信時潔との関わりを、何かお書きになっているだろうと思っていたものの、同シリーズ全27巻に目を通すことはできずにいました。この「辞書」で探して、収録されている書名を調べ、書店や、近くの図書館で確認できないものは、近代文学館まで行って閲覧したものもあります。
このサイトの徹底した仕事ぶりには「敬服」のひとこと。個人研究サイトとしても、とても参考になります。
團さんの『好きな歌・嫌いな歌』という本には「海ゆかば」について書いた章があります。
http://www.tasc.or.jp/~pipedan/other/newpage13sukinautakirainauta-bunko.bak
また、『私の日本音楽史―異文化との出会い 』(NHKライブラリー 1999)という本があるのですが、これは、NHKの人間大学「日本人と西洋音楽」(1997年放送)で放送したものを、のちにまとめたものです。
http://www.tasc.or.jp/~pipedan/other/newpage47.htm
↑ このページ ↑ に書かれている「この(放送)内容は、簡略化しているのでちゃんとしたものを書きたいとおっしゃっていた」という、簡略化されて載せられなかった内容のひとつが「信時潔」だったようです。放送当時は、ほとんど触れられていませんでしたが、NHKライブラリーの本になった時に、書き加えられました。
CD『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』に収録された「花すみれ」(貞明皇后御歌)は、最初は女子学習院の歌として作られました。
その後、女子学習院の曲は作り替えられて、別の旋律となっています。それが「はなすみれ」 (すべて、ひらがなで表記します)
この曲は、学習院校友会サイトで聴く事ができます。
https://oukai.etc.gakushuin.ac.jp/song/sumire.htm
女子学習院という名の学校はなくなりましたが、今も学習院女子中等科・女子高等科の音楽の授業では、ゆかりの曲として「はなすみれ」をとりあげているそうです。(ということは、たぶん愛子さまも歌われるのでしょう)
ちなみに、学習院大学開設二年を記念して、昭和26年に作られた「学習院院歌」(安倍能成作詞)も信時潔作曲です。
https://oukai.etc.gakushuin.ac.jp/song/inka.htm
さて、最初に作られた「花すみれ」は、女子学習院で使わなくなって、一般のレコードになったのですから、払い下げというか、リサイクルというか。したたかなのか、歌の魅力なのか、はたまた女学生の心を捕らえたのか、とその頃の経緯を知りたくなります。
初版のセノオ楽譜(前回の記事に写真あり)が大正13年5月発行。浅草オペラの名歌や「宵待草」を竹久夢二の表紙絵で売り出したほか大正末から昭和初年にかけて多くのピース楽譜を出していたセノオ楽譜です。皇后陛下の御歌を女学生の愛唱歌にというセノオ楽譜のもくろみもあったのではないかと思います。
山田耕筰作曲の「花すみれの御歌」もセノオ楽譜で、独唱曲が大正15年にでています。二部合唱、三部合唱も山田耕筰作曲として、セノオ楽譜から出版されていますが、実は旋律は・・・という不思議な話は、解説p.16に書いた通りです。
信時の「花すみれ」「はなすみれ」と、山田耕筰の「花すみれの御歌」の聴き比べコンサートというのも、面白いかもしれません。
昨日のラジオ歌謡に続いて、今日は国民歌謡について、書きます。
ラジオ歌謡は戦後スタートしたものですが、その前身というべきものが「国民
歌謡」~「われらのうた」や「国民合唱」として放送・発表されたものです。
信時潔の作品で、「国民歌謡」として「出版された」楽譜は
国民歌謡 第37輯 国に誓ふ ☆
国民歌謡 第50輯 興亜奉公の歌 ☆
国民歌謡 第61輯 新政讃頌
国民歌謡 第66輯 蘭花の頌(満州国皇帝陛下奉迎歌)
それから、当時作曲者は公表されていませんでしたが
国民歌謡 第56輯 紀元二千六百年頌歌 ☆
(☆印は、『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』 に収録)
また、出版譜は、国民歌謡のシリーズとしては出ませんでしたが、
「海ゆかば」も国民歌謡の時間帯に放送されたようです。
国民歌謡から、昨日話題にしたラジオ歌謡までをとりあげた、立派なCD全集が出ていて、
ことに別冊解説書の資料的価値は高く、今までの調査で、ずいぶん利用させていただきました。
国民歌謡ラジオ歌謡大全集
コロムビアファミリークラブ
CD10枚組・全200曲
◎全曲歌詩掲載の別冊解説書つき ◎特製ケース入り
◎制作/コロムビアミュージックエンタテインメント(株)
販売価格:25,200円(税込)
そのほかに「国民歌謡~われらのうた」を取り上げた、以下のようなCDも出ています。