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の・ぶ・ろぐ   ・・・・・・・・・・  作曲家・信時潔の人と作品に関する最新ニュースや、日々思いついたことなどを書いています。
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CD『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』に収録された「花すみれ」(貞明皇后御歌)は、最初は女子学習院の歌として作られました。

その後、女子学習院の曲は作り替えられて、別の旋律となっています。それが「はなすみれ」 (すべて、ひらがなで表記します)

この曲は、学習院校友会サイトで聴く事ができます。
   https://oukai.etc.gakushuin.ac.jp/song/sumire.htm 

女子学習院という名の学校はなくなりましたが、今も学習院女子中等科・女子高等科の音楽の授業では、ゆかりの曲として「はなすみれ」をとりあげているそうです。(ということは、たぶん愛子さまも歌われるのでしょう)

ちなみに、学習院大学開設二年を記念して、昭和26年に作られた「学習院院歌」(安倍能成作詞)も信時潔作曲です。
  https://oukai.etc.gakushuin.ac.jp/song/inka.htm

さて、最初に作られた「花すみれ」は、女子学習院で使わなくなって、一般のレコードになったのですから、払い下げというか、リサイクルというか。したたかなのか、歌の魅力なのか、はたまた女学生の心を捕らえたのか、とその頃の経緯を知りたくなります。

初版のセノオ楽譜(前回の記事に写真あり)が大正13年5月発行。浅草オペラの名歌や「宵待草」を竹久夢二の表紙絵で売り出したほか大正末から昭和初年にかけて多くのピース楽譜を出していたセノオ楽譜です。皇后陛下の御歌を女学生の愛唱歌にというセノオ楽譜のもくろみもあったのではないかと思います。

山田耕筰作曲の「花すみれの御歌」もセノオ楽譜で、独唱曲が大正15年にでています。二部合唱、三部合唱も山田耕筰作曲として、セノオ楽譜から出版されていますが、実は旋律は・・・という不思議な話は、解説p.16に書いた通りです。

信時の「花すみれ」「はなすみれ」と、山田耕筰の「花すみれの御歌」の聴き比べコンサートというのも、面白いかもしれません。
 

 

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『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』の、DISC-1の冒頭と、DISC-6にも入っている「花すみれ」については、これまで詳しいことを調べたことがなく、今回の準備のために調べれば調べるほどいろいろなことがわかりました。この曲だけ長く書くわけにもいかず、添付の解説書では、かなり短くまとめましたが、詳しく書けばひとつの論文がかけるほどではないかと思います。 なぜ、二種の「花すみれ」「はなすみれ」があるのか?山田耕筰の「花すみれの御歌」との関係・・・etc。

今回の解説書はモノクロなので、カラーが出なくて残念でしたが、hanasumire1forWEB.JPG
p.17の唱歌『花すミれ』の表紙は、右のように紫と白とピンクという彩りの、
そんなお菓子がどこかにあったと思い出させるような色合いです。
どう云うわけか、この初版譜は、信時家に残っていないのですが、最近、偶然入手しました。

この曲は、ピースのほかにもいくつかの合唱曲集にも収録され、大正~昭和初年の女学生に愛唱されたようです。

このCD『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』 は、最初は7月末に発売される予定で、発売情報が一旦流れましたが、諸般の事情で延期となり、ついに11月19日に発売になりました。

実は、延期されたおかげで、加えることが出来た、「最後の一枚」のSPレコードがありました。

DISC4 の 東北民謡集 の二枚のSPのうちの、ポリドールS-2017でした。
ポリドールS-2016は、作曲者の遺品の中に残っていましたが、レコードの袋やカードはありません。
当時のポリドールのカタログの所在がわからず、詳細を確認することができずにいました。

どのような形で企画、発売されたのかは、当時のレコード評を見るしかなかったのですが、どうも信時作品が二枚あったらしいということがわかってきました。
SPレコードは、どこかに残っているのか、いないのか?それとも、レコード評の書き方が曖昧で、情報の読み取り方を間違えているのか?

そして、郡修彦氏の執念の探索の結果、ついに、最初の発売予定日を過ぎた8月になって、幻の 「ポリドール S-2017」が見つかったのです。

東北民謡集は、花岡千春先生が、CD『花林/雨の道』に録音しています。その時も、作曲当時の音を参考にしたいということで探していたのです。(残っている楽譜には書き込みも多く完全な形で残っていないため、作曲者の目が通った初演時の楽譜、および録音を探しましたが当時は入手できませんでした。)

録音も別冊解説書も、もうほとんど仕上がっていたのですが、この機会をのがしては、録音・復刻のチャンスはないかもしれない、ということで、ついに追加収録されることになったのでした。
土岐善麿作詩、信時潔作曲「われらの日本」の、初演当時使われた楽譜が、見つかりません。
どなたかお持ちの方は、いらっしゃいませんか?

1947年5月3日、宮城前の広場の憲法施行記念式典で、この曲を歌ったのは東京音楽学校、武蔵野音楽学校、国立音楽学校の生徒350名だったようですが、その楽譜が保存されていないのです。

当時のことですから、全国すべてではないにしても、小・中学校で歌ったり楽譜が配られたり、ということもあったはずです。けれども、音楽学校や役所の書類としては最初の印刷譜が残っていないようなのです。(二次資料は確認済)

「われらの日本」のSPレコードの反対側の面には、中山晋平の「憲法音頭」が録音されています。
これについては、入念な調査の結果が一冊の本となっています。
 和田登著 『踊りおどろか「憲法音頭」―その消えた謎の戦後』 (本の泉社 2006)

記念式典の後、5月8日から、憲法普及会制定「われらの日本」が、『ラジオ歌謡』として放送されています。演奏者は酒井弘、東京放送合唱団。
なお、ラジオ歌謡については、最近「ラジオ歌謡研究会」が熱心に調査・研究、普及活動をされているようで、同会の研究誌『ラジオ歌謡研究』は2007年創刊。同会会長・工藤雄一編の楽譜『思い出のラジオ歌謡選曲集』 (全音楽譜出版社)も発行されています。
2年半という時間をかけてようやく送り出したCDが発売となっても、目の前で売れていくわけではないのでなんとなく、実感がありません。なので、Amazon の サイトを見て「在庫何点」とかAmazon.co.jp ランキング: 音楽で9,482位(本日現在)なんていうのを見てささやかな励みにしております...(笑)....

ところで、そのAmazonサイトで見てあらためてびっくりしたのは「収録時間: 430 分」というもの。なるほど、CDをお届けしたご協力者の皆様から、「まだ聴いてませんが、ありがとう」といわれるのも仕方ない。私は仕事なので、何ヶ月もかけて(主に往復の通勤電車の中で!)各曲を何度も聴きましたが、普通は一気にそんなに聴けませんね(納得。)

さて、その430分の最後に、新憲法施行記念国民歌「われらの日本」を配したのは、私のこだわりです。
代表作といわれている「海道東征」や「海ゆかば」を最後に、という意見もありましたが、是非そうしたいという私の意見を入れてもらいました。

ひとつには、「戦後一切作品を発表しなかった」という一般に流布している説と、事実は違うということを押さえておきたかった。もちろん、あの戦争が終わった時、複雑な「想い」はいろいろあったでしょう。だからといって、作品を発表しないとか、そのような単純な形をとるような人ではなかった。戦後は新しい世代を応援し、その活躍を見守りながらも、頼まれた仕事では、嘘のない自分の音楽を書いていたのではないかと思います。

最近「海ゆかば」「海道東征」だけで語られている感のある信時潔は、一方で新憲法施行記念国民歌「われらの日本」の信時潔だった-----そこで、何か気づいてくださる方もあるかという想いもありました。

(つづく)

続いて『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』 の外側の話。
中に入ってる各CDのケース内のカード(インレイカードと言うそうです)のデザインについて。
これも奥付に書きましたが。

共益商社書店の初版譜のイメージから作りました。
渋めの地色に、タイトル部分は白抜き。それだけ。・・・・というこのシンプルさ。

今となってはその事情を確かめることは出来ませんが。
私は信時潔という人の趣味だろうと直感しました。

遺作の「女人和歌連曲」の出版譜は没後に作られたもので、鮮やかな赤に近い橙色。
本人が関わらなかったこの例などと比べると、尚更そんな気がしてきます。

共益商社書店は昭和10年前後の出版譜ですから、いくら状態の良い物でも
幾分の色あせはあって、本当はどんな色だったのか、わかりません。

また、インレイカードにするにあたって、出来るだけ近い色を選んだつもりですが、
印刷時の色の出具合も難しいもので。

DISC-1 から DISC-6まで、それぞれ
桜花の歌、鶯の卵より、独楽吟、沙羅、紀の国の歌、やまとには
の色を使っています。

桜花の歌は当然「さくら色」。鶯の卵よりは「うぐいす色」。沙羅は渋い「藍色」。
独楽吟は日本の伝統的な「むらさき色」。紀の国の歌と、やまとにははそれぞれ緑色ですが、
微妙にトーンが違っています。

カラー写真でも、なかなかこれらの色は表現できません。

新響社の出版譜も、並べてみると、いかにもシンプルで「信時潔らしい」と思えます。

いつかどこかで、初版譜の実物をごらんになる機会がありましたら、思い出してください。


まずはじめに、『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』 外側の話から。

外箱デザインは、解説書の奥付にも書いたとおり、解説担当者が個人的に持っているbox-for-web.JPG作曲者信時潔の遺品からデザインしています。 ナントカ織りという名前もあるのでしょうけど、特別ないわれがあるようなものではない、 ほんとうにごく普通の着物です。

昔の人は日常に着物を着ていたものです。
私の父も、その父=つまり信時潔の形見分けにもらったらしい着物なども着ていた時期がありました。外出用ではありませんでしたが、お風呂上りなんかに、ちょっと引っ掛ける感じで。
昭和40年代も後半になってからは、父も着物を着なくなりました。
着物のおじいちゃん=信時潔のイメージがあるのは、本当の記憶なのか、写真などであとから記憶されたものか、わからないのですが。

ごく普通、普通過ぎるほど普通の。ぜんぜん気取らない感じが出ればそれでいいかなと思って、着物の柄から外箱デザインをしてもらいました。箱のデザインは通称お弁当箱スタイルというそうで、発売元の財団がしばしば使用する得意のスタイルです。コンパクトにまとまるし、本棚に置いてもいいかもしれない、と思ってこれにしてみました。

外箱の表にある題字の「信時潔」は、本人のサインによるものです。わりとよそ行きに書いたもので、日常の筆跡とは違う感じです。

 当面は、このたび発売されたCD『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』の編集・制作の裏話などを思いつくままに。そのほか周辺雑記を書いていきます。気楽におつきあいください。
*-*-*-*-*
CD『SP音源復刻盤 信時潔作品集成
tenkai-web.jpg






企画・構成・復刻:郡 修彦
構成・解説:信時裕子
CD6枚組、別冊解説書
(B5変形判 全144頁)
15,750円(税抜15,000円)
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